新型コロナウイルスの感染拡大で、問題視されていたマスクのインターネット転売が近く禁じられる。定価の10倍以上で転売されたとしても、従来は「経済活動の一環」として取り締まりは困難だったが、禁止を求める声が相次ぎ、政府が強制措置に踏み切った形だ。法の“グレーゾーン”への介入に、専門家は「例外的だ」と指摘。オークションサイトなどでは早速、「在庫処分」とみられる現象も起きている。(桑村朋、土屋宏剛)
《飛沫(ひまつ)ウイルス COVID-19対策 200枚3980円》《コロナウイルス 500枚3万9800円》。6日、オークションサイト「ヤフオク!」では、マスクを大量購入した人からとみられる売れ残りが多数出品された。1枚単位での値段は市場価格とほぼ同じ。数枚単位での出品もあり、損を覚悟した「投げ売り」の可能性がある。
中には1880枚のマスクに「99億円」で応札するなど、買い占めた人への嫌がらせとみられる反応もあった。
定価の10倍以上など、値段が高騰していた一時の光景は見る影もない。5日に判明した政府の新方針が影響したことは明らかだ。
政府は国民生活安定緊急措置法を適用し、ネット上などでのマスクの転売行為を個人や業者を問わず禁止する方針を固めた。罰則は懲役5年、罰金300万円を上限として今後詰める。関係者によると、数日の周知期間を経て、3月中旬にも始まる見通しだ。
利益目的での転売行為をめぐっては、昨年6月に入場券不正転売禁止法が施行された。同法に基づく摘発はすでにあるが、対象はあくまでもチケットのみ。
転売問題に詳しい福井健策弁護士によると、そもそも許可のない転売を禁じる法律はない。それゆえに、転売行為そのものは「通常の経済活動の一環とみなされ、違法行為ではない」という。
一方、オークションサイトなどが普及した結果、誰でも気軽に転売で利益を出せるようになり、「安易な利益追求のため、買い占めや高額転売を繰り返す人が増加してしまった」と分析する。
福井弁護士はマスクの買い占めや高額転売を「非常に悪質な手口」と指摘した上で、政府の転売規制方針について「日用品への措置としては例外的だ」と述べ、一定の評価を下す。
もちろんネット上の出品を規制しても、「抜け穴」を突く無法者が出てこないとはかぎらない。福井弁護士は「法整備に頼るだけでなく、民間でも知恵を出し合い、高額転売商品が売れない仕組みや環境づくりが必要」と話した。
政府は今後、消毒液やおむつなどでも品薄が深刻になれば、転売の禁止対象に加えることを検討するという。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース